かなしい月夜

skb_mate022005-01-11

ぬすつと犬めが、くさつた波止場の月に吠えてゐる。
たましひが耳をすますと、陰気くさい声をして、
黄いろい娘たちが合唱してゐる、合唱してゐる。
波止場のくらい石垣で。

いつも、なぜおれはこれなんだ、
犬よ、青白いふしあはせの犬よ。
萩原朔太郎「かなしい月夜」)