死の停止

skb_mate022007-07-07

chibinova:ちょうど一年前、おれの好きなゲームの原画家が36才で亡くなったことを知って。亡くなったのは6月17日なんだけど、本人のサイトへ訃報が載ったのが七夕の日だったと。

奴股:なんて人かな?

chibinova:http://www.diana.dti.ne.jp/~horibe/

奴股:へえ。部屋が写っているのが生々しいね。今、読後感を味わっている久世光彦と言う人も、こちらは60歳を過ぎてだけれども、わりと最近亡くなった人だ。

chibinova:久世光彦ってなんかきいたことあるな。ああ、向田邦子関係か。

奴股:『美の死 ぼくの感傷的読書』って本なんだけど。このなかの「美の死」という随筆がすばらしい。ターナー吉屋信子三島由紀夫とを腹違いの兄と姉と弟というふうにイメージし、そこから幻想を広げている。「この作家の書斎に、無毛の少女の一人を招き入れ、一夜を過ごすことを許したら、その子はどんなに幸福なことだろう。その子は革張りの堅い椅子に深く腰掛ける。廊下の金の時計が時を刻む音が聞こえても、その子はちっとも時間を気にしない。少女たちの世界では、時は止まったままか、そうでなければ、彼女が真性の少女だったころから、時間はとっくに百年も経っていて、それでもその子は平気で少女のままでいるからである。」以下の描写は、久しぶりにがつんとやられたね。

chibinova:それ、森茉莉のことを言ってるみたいやね。

奴股:そのまま少女が午睡をむさぼる描写になるわけだが、まさに森茉莉的な密室のエロス。

chibinova:なかなか興味深い。

奴股:ちくま文庫。例によって。この本で、渡辺温をあらためて読みたくなった。「可哀相な姉」ってやつが有名。ネットであるけど、紙面で読みたい。ネットは ・・・まってよ。

chibinova:青空文庫かな?

奴股:http://www.aozora.gr.jp/cards/000020/files/195.html

chibinova:(読み中)

奴股:あと久坂葉子の「ドミノのお告げ」とか。この人は阪急六甲駅で自殺した。たしか21歳ぐらい。もちろん、自殺したのは戦後の混乱期だけど。今、かつての王子図書館に「神戸文学館」てのができていて、そこで知った。で、この久世さんも時折言及している。しかしもっとも印象に残ったのは、小林秀雄中原中也と、泰子なる女の関係について。実話に基づいて、田中陽造という脚本家がいい本を書いていたらしい。ところが残念ながら映画にはならなかった、と。本の一部が紹介されているが、たしかにすばらしい。小林も、あくまで「解釈」なんだけれども、泰子を中原から冷静沈着に奪ったわけだが、それもすべて中原に勝つためであった、と。彼の生涯気になり続けたのは、ほかでもない、夭逝した中原中也であった、と。そんなことを空想すると、小林秀雄の固い評論も、俄然読む気が湧いてくるね。

chibinova:やおいの王道やね。彼女とか奥さんはたいがいかませ犬扱いっていう。ミック、キース、マリアンヌの関係とか、ジョン、スチュ、アストリッドの関係とか。

奴股:『バックビート』はそういう意味で名作やね。実際の日常は、シーンシーンの合間に膨大な「退屈でつまらない時」が挟まっているわけで、リアルタイムに生じる伝説などありえない。あくまで想起され、解釈されたときに、それらは編集されて伝説になる。それこそ、シーンだけが残る。小林やらスチュアートやらが生きていたとして、彼らにじかにインタビューしても、たぶんつまらない話しか得られないだろう。

chibinova:こないだ、少女イデア vol,4 「僕たちアドニスナルキッソス・ ヒュアキントスだね」というイベントをやったんだけど、バックグラウンドで『アナザー・カントリー』と『ブロークバック・マウンテン』のDVDを流してたの。やっぱり女子はもうみんな大好きみたいなんですよ。で、ちょうどボーイフレンズ・デッドがライブやってるときに『ブロークバック・マウンテン』のクライマックスのシーンがかかってたらしくて、なんかすっかり「ええかんじ」になってて。