海に住む少女

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

「海に住む少女」の大海原に浮かんでは消える町。「飼葉桶を囲む牛とロバ」では、イエス誕生に立ち合った牛の、美しい自己犠牲が語られる。不条理な世界のなかで必死に生きるものたちが生み出した、ユニークな短編の数々。時代が変わり、国が違っても、ひとの寂しさは変わらない。SFであり、童話であり、ファンジーであり、寓話でもある。日本の詩人から「詩聖」と呼ばれたシュペルヴィエルの、幻想にあふれた物語は、不条理な世界で必死に生きるものたちを産み出した。その一篇一篇が読む者の感覚に響き、心にしみ込んでいく。上記作品の他に、独特な死後の世界を描いた「セーヌ河の名なしの娘」、人間の残忍さを哀しく見つめた「ラニ」、あまりにも有名な聖書の動物たちを主人公にした「ノアの箱船」、切なすぎる孤独を切り取った「牛乳のお椀」など、宝石のような全10篇を収録。(版元による紹介文)

内容紹介に激しくそそられたので、すかさず注文。訳者による「フランスの宮沢賢治」といった魅力的な惹句、そこへ加えて少女譚多めとあっては、なにがなんでもハマらないわけにはいかない。シュペルヴィエル1886年ウルグアイのモンテヴィデオ生まれ。はやくに両親が亡くなったため、叔父夫婦に引き取られて育つ。10才の頃に叔父夫婦の郷里であるパリへ移住、初の詩集『船着場』が刊行されたのは38才のとき、76才で「詩王」の称号を授与されたという経歴もなんだかおもしろい。まったく知らなかったんですが、日本でも堀口大學訳で詩集が出版されているとか。オスカー・ワイルドの童話なんかとの相似性を指摘している書評なんかもちらほら目にしたんで、その道(ってどの道なんだか)の方々には超有名なのかもしれませんね。読むのがいまから楽しみです。


蛇行する川のほとり (中公文庫)

蛇行する川のほとり (中公文庫)

Q:70年代少女漫画をやるんだって思ったのは? A:(略)書いていてうっとりできるものが書きたいわと思ってた。考えてみると、女の子が中心のモノは、まだやってないから。男の子だけってのは『ネバーランド』でやったけど。「お姉さま!」って感じにして、少女漫画をやるのよって思っていて、そこに中央公論新社から、こういう企画をもらって、渡りに舟だと思いましたね。 Q:70年代少女漫画ってのは、どのあたりなんですか? A:内田善美とか清原なつのとか好きだったんで。「りぼん」系ですね。もちろん萩尾望都とか、そのへんもひっくるめたイメージで。あの頃の少女漫画って、私の考えているキーワードは、世界に対する潔癖さ。それをもっているというのが当時の少女漫画だと思うので、そういうイメージで書いている。
恩田陸インタビュー - 『蛇行する川のほとり』創作の秘密

文庫になったら買おうと思って、すっかり忘れていた本。去年の6月に出ていました。友桐夏リリカル・ミステリーシリーズみたいな物語を恩田陸が書いているのだから、良くないわけがない。ていうか、自分の中ではもう読む前から殿堂入りです。カバーイラストは酒井駒子、彼女の絵はどれも神憑り的に自分の琴線を震わせるのですが、この絵はそれらのなかでも最高にきてます。あまりに素晴らしすぎて、目から血が出そう。


あっぷあっぷ

あっぷあっぷ

プールでおよいだ帰りによった、ルルリの髪はまだぬれたまま ロロの指にからまったまま 福永信の小説と村瀬恭子のドローイングが、合わせ鏡のように映し出す世界。鮮やかなコラボレーションで贈る、スリリングで幻想的な子どもの世界へようこそ。二人の少女が夢の中で出会う少女・ルルリの正体とは…?(版元による紹介文)

こちらも内容紹介に激しくそそられたものの、アートっぽい抽象的な雰囲気が漂っているゆえ、百合萌え燃料には弱いだろうなぁとの危惧も若干。特攻していいものかどうなのか。村瀬恭子は一貫して森の中で彷徨う少女をモチーフにした絵を描く人らしく、彼女について書かれた文のそばで、奈良美智の名前を見つけることも多いです。少女の身体の脆さ、危うさを、風景に溶け入るような描写で表現しているとのこと。さてどうしたものか。