ばら物語

Tale of Rose Knight―ばら物語〈Vol.1〉

Tale of Rose Knight―ばら物語〈Vol.1〉

16世紀、イタリア戦争の最中、ロンバルディアに咲いた二輪のばら ─ローザとロザリア─。引き裂かれた運命の糸が再び絡み合う時、戦乱の嵐が吹き荒れる! 航空戦記劇画で有名な滝沢聖峰による、『月刊モデルグラフィックス』誌で好評連載中の歴史一大叙事詩がついに単行本化! 当時の騎士同士による歩兵戦や、武器、甲冑などを知る資料としても非常に有用な一冊がついに登場!! (帯の紹介文より)

軍オタ誌連載という性格上、その資料性の高さが謳われているあたり、綿密な取材と考証に裏打ちされた完成度のほどが伺えます。しかしわたしがなによりも強調したいのは、ドラマの骨格をなしているのが、セッシア都市国家同盟騎士団隊長ロザリアと、ドイツ傭兵部隊黒ツンフト隊長マイスター・ローザの関係である点。これはぜひ買って読んでいただきたいゆえ、ネタバレになるような発言は控えますが、とにかく鳥肌ものなのですよ。また、ロザリアが拾って自分付きの下女とした戦災孤児、ジェルソミーナの存在も見逃せません。そもそも女騎士を主人公に据えたヒロイック・ファンタジーといって思い浮かぶのはジャンヌ・ダルク関連作品、及びグイン・サーガ外伝である『パロスの剣』(栗本薫+いがらしゆみこ)ぐらいだったりするので、この作品の存在意義の大きさは計り知れないと言っても過言ではないでしょう。わたしのなかで、ながらくその地位を不動のものとしていた漫画版『風の谷のナウシカ』に取って代わる可能性がきわめて高いです。


アン・フィッツァーランドの秘術録

舞台は16世紀イギリス! 英国女王エリザベス一世直属の諜報機関「王立秘術協会」の物語。ランズエンド修道院跡に潜伏していたスパイが謎の死を遂げる。エリザベス一世と内務卿ウォルシンガムは、協会の切り札にして「魔女」「炎使い」の異名を持つアン・フィッツァーランドを派遣するが……「薔薇の名前」と「007」に愛を込めた時代物ハードボイルドミステリー(?)

タイトルつながりで、以前にも紹介させていただいた『アン・フィッツァーランドの秘術録』を。そういやタイトル的に、電撃の『とある魔術の禁書目録』が気になっているんですけど、果たしておもしろいんでしょうか。というか、投資に見合うだけのものを返してもらえるのだろうか、ってことなんですが・・・とりあえず漫画版に手を出してみようかな。でも、そう遠くないうちにアニメ化されるっぽい雰囲気も濃厚だし、それを待ってもいいんですけどね。ちょっと気になってるんだよなー。


西暦2016年の国連管理都市ミリオポリス(かつてのウィーン)では、極度の少子高齢化と犯罪・テロの増加を背景に児童労働と身体障害児に対するサイボーグ化が認められていた。『オイレンシュピーゲル』は、警察組織MPBの飼い犬となり、機械の手足を得て街を縦横無尽に駆けめぐる「黒犬」「紅犬」「白犬」と呼ばれる三人の少女の物語である。
オイレンシュピーゲル - Wikipedia

これも手を出そうかどうしようか迷い中。冲方丁作品だと、森川久美の「ヴァレンティーノ」シリーズ*1ルネサンス期のイタリアという背景を共有する『ピルグリム・イェーガー』がすごくお気に入り。ジョジョ種村季弘あたりの衒学趣味を目一杯突っ込んだような作風がおもしろいというのもありつつ、作画を担当する伊藤真美の描く、圧倒的なまでに肉感的な女性の体のラインが素晴らしいのです。そして、主人公であるアデールとカーリンのコンビが見せる絆の強さ。きみらもう結婚せぇと言いたくなることうけあい・・・言うてたら、第1部完結となる最新刊で訣別してしまったわけですけどね。伊藤真美は『LAD:UNA』という作品でもビアン描写を入れてきてましたが、これがニコラ・グリフィスの『スロー・リバー』を意識したんじゃないかというSFの傑作ですので、ぜひご一読を。エロ漫画誌連載だったうえ、未完ですけど。夢路キリコの描く『シュヴァリエ』も、18世紀のフランスを舞台にした『ピルグリム・イェーガー』といった感じでおもしろいですよ。で、話戻して冲方丁の『オイレンシュピーゲル』ですね。なにしろいちばん話題になったんじゃないかと思われるSFものの「マルドゥック」シリーズを読んでいないうえ、どうも『ルー=ガルー』と『ガンスリ』の影がちらついてしまって・・・いや、でもたぶん問題はそこじゃないっていうか、要はお金を遣いすぎているうえに置く場所がないってだけなんでしょう。うーん、どうしようかな。去年の暮れから漫画化が始まったようなので、そちらは単行本が出たら買いますけど。


ドロテア~魔女の鉄鎚~ (1) (カドカワコミックスドラゴンJr)

ドロテア~魔女の鉄鎚~ (1) (カドカワコミックスドラゴンJr)

15世紀末期のドイツ。ヨーロッパ中を魔女狩りが猛威を振るう中、アルビノの少女は自らが魔女と告発される危険を背負いながら故郷を救うために戦う。 ドロテア・エッシェンバッハ・・・主人公。白い髪、白い肌、赤い双眸を持つアルビノの少女。日の光に弱い。「ナウダースの白き子供」。雷鎚団に所属する女騎士。歩兵隊所属で階級は少尉。雷鎚の魔女(ミュルニールのまじょ)の二つ名を持つ武術の達人。
ドロテア 〜魔女の鉄鎚〜 - Wikipedia

『ばら物語』に関連して紹介されていた漫画。いや、こんなのもう買うしかないじゃないですか。ついさっきまでお金を遣いすぎているうえに置く場所がないとかボヤいていたくせになんだそりゃってかんじですが、渚っぽく言うと、「もう知ってしまいました」。そう、知ってしまった以上は手を出すしかないのです。ていうか、楽しみにしていたいとうえいの『断罪者』が完結してしまったんで、ミネルヴァの梟が暮れ染める黄昏とともに飛翔するかのごとく、その穴を埋めて心慰めよとアテナが遣わした作品に相違ありません。

*1:これも『パロスの剣』と同じく、男装の麗人が主人公。