あんたバカァ?

skb_mate022004-06-18

きょうは漫画の話。どうもきのうの日記からだと、いかにも青池保子さんや木原敏江さんを好きそうな感じが漂ってきますが、山岸凉子さんについてです。氏の作品でもっとも印象に残っているのは、『日出処の天子』だったりします(おそらく世代的なものもあるのでしょう)。これが「不朽の名作」と呼ばれていることを、わたしはつい最近まで知りませんでした。てっきり腐女子貴腐人しか読んでいないんじゃないかと思い込んでました*1。この作品のなにがすごいって、もうゲーム『To Heart』と同じ「なにもなさ」、これに尽きます。もちろん設定は非日常極まりないんです。聖徳太子が実はボーイズラブであり、かつ超能力を持っていたっていう*2突飛もないもの。でも、読み口がすごくさらっとしてる。ちょっと話は飛びますが、舞台は古代マケドニアかペルシア辺りの街*3。夕暮れ、テラスで眠っている若者を見た少女の、「眠っているの、それとも死んでいるの」というモノローグ。なんの漫画だったか例によってよく憶えていないのですが、とにかくそういうシーンがありまして。それを読んだ時、外から入ってくる微かな街のざわめきや、生ぬるい風が肌にまとわりつく感じや、西日の照り返しが眩しくて思わず目を細めてしまう感じ、そんなものが鮮明に呼び起こされたんですが、『日出処の天子』を読んでいる間じゅう、もうずっとそれが体感されるんですよ。読みながら、「これってひょっとすると、かなりすごいことかも」なんて思ってました。それまでは、ほぼ小説でしかそういう感じを体験したことがなかったので、単純にびっくりしたし、山岸凉子という作家のすごさを思い知らされました。けど、あくまでさらっとしてるんですね。なんていうのかなぁ、話に熱くのめり込もうとすると、うなぎみたいにスルッと逃げられてしまうんです。「あんたはこっち側の存在じゃないでしょ?」って、そう言われてるような気がする。で、たしかにそう。でも、物陰からそっと見守るような感覚って嫌いじゃない、っていうか相当好きなので、それ以上そこへ入っていきたいっていう衝動も起きないんです。そういういい感じに突き放した作品を、特に気に入るみたいです、わたしは。その最たる作品として、映画『世界の終わりという名の雑貨店』を挙げてみるテスト(←我ながら、どこか都合的な部分が多いように感じます)
蛇足ながら、タイトルは聖徳太子といえば明日香(飛鳥?)かなt うわなにをするやm
《today's tune》Sir Edward Elgar*4 / Variations on an Original Theme, op36 "Enigma" : Var. IX (Nimrod) Adagio

*1:つーか竹宮惠子美学の粋『風と木の詩』があるだろうと小一時間w

*2:そう、それで思い出したけど、裏『1999年の夏休み』といった趣の『櫻の園』、そして裏『突然炎のごとく』といった趣の『気まぐれオレンジ☆ロード:あの日に帰りたい』。どちらも映画です。ぜひ、御覧になってみていただきたい。

*3:あるいはチグリスとユーフラテスの岸辺zabadak)。そんな感じのタイトルが、新井素子さんの小説にもありましたね。そうそうラノベといえば、『ICO』のノベライズ版が今月の15日に発売されたとか。著者は宮部みゆきさんだそうです。去年から週間現代で連載されていたらしいんですが、全然知らなかった。つか、週間現代とかふつうに読まないしなぁ・・・。で、今はてなのキーワードへ飛んでみたらちゃんと書いてあったorz

*4:「威風堂々」や「愛の挨拶」で知られる英国の有名な作曲家エルガーですが、この「エニグマ変奏曲」はあまり積極的に聴かれていないようです。たとえばピーター・グリーナウェイ作品でのマイケル・ナイマンの音楽や、すぎやまこういち氏によるスーファミモノポリーの音楽(弦楽四重奏アレンジCDは、ほんともう鼻血もの!)を愛する人に、ぜひ聴いていただきたいです。ジャクリーヌ・デュ・プレ名義のCDが、いちばん取っ付きやすいかと思います。わたしが抱くイングランドのイメージは、すべてこの作品に凝縮されています。もちろんマリみてにもジャストフィッt