生き死に

skb_mate022004-10-15

朝から部屋の外が騒がしい。見ると警官が数人ウロウロしている。話を聞いてみると、どうやらふたつ隣の部屋に住む男性が亡くなっていたらしい。死後数日経っていたようで、「よくこの臭いで平気でしたね」と言われた。平気じゃないっつーの。このアパートは、なぜかいつも異臭がたちこめている。住みはじめた頃は、不快だし気にもなったが、もう慣れてしまったのか、最近はあまり気にならなくなっていた。部屋にいれば、煙草の匂いでわからなくなるし。でもここ2日ほどは、だんだんその臭いが強烈になってきていて、いったい何が原因なのだろうと不審に思っていたところだった。なんとなく、いままでとは別種の臭いのようにも思えたし。で、そうか、これが人間の腐乱臭か、と変に感心してしまったのだが。現代の日本に住んでいて、そうそう知りうることではない。まさにトリビア有機生命体はやっかいだな、などとよくわからないことを考えていた。そして遺体が運び出されたあと、その臭いはさらに倍増した。籠っていた臭いが一気に解放され、暴力的なまでにその威力を増した。たまらずペット用の消臭剤を開封して鼻に押し当てていたのだが、だんだん鼻がムズムズしてくるので離す、するとまたあの凄まじい臭いが襲ってくる。で、さっきまで図書館に避難していた。帰ってきてみると、アパートの外まで臭いが漂い出している。考えてみれば、60キロほどの肉が腐ったのだ。そう簡単に臭いは消えないだろう。だが、自分の部屋の中の臭いはかなりましになっていた。消臭剤が効いているようだ。ちなみにわたしは、病死した老婆が腐り、しみ出した体液の跡が残る部屋に住んでいたこともあるので、その手のことはまったく気にならない。あの震災も経験してるし。