Before Night Falls

skb_mate022005-02-05

映画『夜になるまえに』*1観る。キューバの亡命作家、反カストロ派、そして同性愛者であるレイナルド・アレナスの、死後2年経ってから出版された同名自伝的小説を映画化したもの。とのことだが、恥ずかしながらこれを観るまで、わたしはレイナルド・アレナスという作家を知らなかった。キューバが舞台で同性愛を扱った映画としては、『苺とチョコレート』ぐらいしか思い浮かばない。なんとなくブニュエルぽい映画だったように記憶しているが、ブニュエルがメキシコへ移住したことも考えあわせれば、中南米スペイン語圏における影響力は、そりゃ大きいだろうなと思う。アルゼンチンの亡命作家、マヌエル・プイグの小説を映画化した『蜘蛛女のキス』も、たしか同性愛を扱った作品ではなかったか。フランス映画ではあるが、シリル・コラールの処女作であり遺作でもある(完成して間もなく、エイズで亡くなった)『野性の夜に』も挙げておきたい。初めて観た同性愛者の自伝的映画ということもあり、とても想い出深い作品なので。ともかく『夜になるまえに』、とても美しくて素晴らしい映画なのだが、いささか薄い。もうちょっとガツンときてほしかった。とくにアメリカへ亡命してからのエピソードなどは、もっとじっくり描写してもよかったのではないかと思う。

物語はあくまで散文詩のように、彼の人生を彩る友人、海、森、青空、気球、枯れたバラ、そしてキューバなどにまつわるエピソードを羅列しているにすぎない。伝記映画の語り口としてはおそろしく下手くそだが、シュナーベル監督の気負いがいいように空回りして、なぜか心に響くのだ。
http://www.eigabaka1.com/reviews/cool_reviews/beforenightfalls.html

以上は佐藤睦雄氏のレビューなのだが、わたしも同じような印象をもった。ドラァグ・クイーンと美男子の中尉との二役を演じるジョニー・デップが素晴らしい、っていうかハマり役。ちょっと興奮してしまいました。映画後半は、生涯を通じてレイナルドの親友となるラサロ(彼は同性愛者ではなかったらしい)との友情が物語の主軸となる。が、中盤辺りでレイナルドを警官へ突き出したり、エイズの末期症状に苦しみ、鎮痛薬を大量に飲んだレイナルドの顔にスーパーのビニール袋を押し付けて窒息死させたりと、ラサロの真意がいまいちよくわからなかった。じっさいに原作を読めば、その辺りも明らかになるのだろうけれど。製作陣が、どういう意図でもってそういう脚色(なのかどうか判断はつけかねるけれども)をしたのかも、よくわからなかった。前者は「ラサロは作家を志していたため、レイナルドの作品や顔も見知っていたためで、逮捕は偶然」とも取れるし、後者は「苦痛のあまり自殺を図った友人のために、その幇助をしてあげた」とも取れるし。まあ、言うてるほど気にはしてませんけど。主演のハビエル・バルデム、ビガス・ルナの『ハモン・ハモン』に出演していたそうなのだけど、ぶっちゃけペネロペ・クルスしか記憶にない・・・。当時、彼女は「スペインの宝石」とまで呼ばれてたんだよなあ(出演作のサブタイトルにも使われたフレーズ)。や、もちろん今がダメってことではないですよ。