月蝕

skb_mate022005-07-21

『吸血鬼ノスフェラトウ』と『カリガリ博士』を観る。うーん、やはりイイ!一瞬、カフカもこれらを鑑賞したのだろうか、などと夢想するが、これらは20年代の映画であり、その頃カフカは、すでに結核の療養生活へ入っているはず。個人的に、もっとも好きな吸血鬼映画は、ロジェ・ヴァディムの『血とバラ』*1である。これは、ファニュの小説『吸血鬼カーミラ*2を映画化したもので、その筋(百合愛好家)のあいだでは、かねてより必読の古典として語り継がれている有名な作品。最近では、リンチの『マルホランド・ドライブ』のネタ元としても名高いのではないかと思われる。カーミラを演じるのは、当時ロジェ・ヴァディムの妻であったアネット・ヴァディム。歴代セレブ妻のなかでは、もっとも知名度が低いものと思われるが、(吸血鬼だけに)その人間離れした美しさたるや、筆舌に尽くし難いものがある(しかも百合ってるしな)。次点には、ポランスキーの、そのものズバリ『吸血鬼』を挙げておこう。吸血鬼ものを偏愛するわたしの贔屓目かもしれないが、この作品におけるシャロン・テートの美しさは、(若さという点では劣るものの)他を大きく引き離している。もちろん、華麗極まる映像美も白眉であるが。さらには、『インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア』のキルステン・ダンストもいいし、コッポラがリメイクした『魔人ドラキュラ』のウィノナ・ライダーも捨て難い。さておき、ノスフェラトウだのカリガリ博士だのを観ていると、どうしても丸尾末広、というか少女椿が読みたくなる。あるいは、少女が少女たりえた時代にだけあらわれた、怪人赤マントの物語。それは、旨いものを食べると、キクマサが欲しくなるのと同じ理屈である。そして怪人ものといえば、どうしても外せないのがフランケンシュタインもの*3。個人的にはウォーホルが監修を務めた『悪魔のはらわた』が好き、というか、フランケンの交配相手として、反魂の術をかけられたゾンビを演じるところの、モニク・ヴァン・ボーレンが思いっきりタイプなだけなのだが。ちなみに、『悪魔のはらわた』と同じプロジェクトチームで、『処女の生き血』なる吸血鬼ものも撮られていて、こちらは、いくぶんまともな出来。デ・シーカやポランスキーも、役者として出しゃばっている。さて、フランケンものといえば、もっとも印象深いのが『ミツバチのささやき』である。自分の生命に、危機を及ぼすかもしれない相手に、だがそれゆえに惹かれてしまう少女の心が揺れ動くさまを*4、詩情豊かに描いてみせた傑作であると同時に、アナたんはにゃ〜ん、と萌え萌えになれる傑作でもある。須藤真澄が、エリセの大ファンであると知ったときには(彼女はとくに、『エル・スール』がお気に入りだそうだが)、妙に納得させられた。たとえば『観光王国』所収の諸作から、それらの匂いを嗅ぎ取ることは、何ぴとにも容易いはず。そういえば、ユーフォニアスの「マルメロ」という曲を、これまたエリセの『マルメロの陽光』と、どうしても結び付けてしまう、とかなんとか。ていうか、「ま、待ってお姉ちゃん!わたしたち、姉妹なんだよ!?」で鼻血ブーってなってるような脳足りんの腐れオタが、こんなことダラダラ書いても詮無いんだけどな。
あ、涼風はじまた。・・・おわた。なんか、どうしようもなくグダグダでいい感じだな(笑い)。けど、もうちょっと線を柔らかくした方がいいんでない?今度は萌えよ剣はじまた。・・・おわた。こっちも素晴らしいユルさだな(笑い)。なんか、演出までるーみっく調になっててわらた。


補足 わたしとしたことが、吸血鬼映画とのファースト・コンタクトである『ハンガー』をすっかり失念していた。作中、バウハウスがディスコで「ベラ・ルゴシの死」を演奏しているなど、吸血鬼ものへの徹底したこだわりが素晴らしい。そしてなんといっても、ドヌーヴとサランドンの絡み。個人的に、この作品の魅力はそこに尽きる。監督を務めたトニー・スコットは、これが処女作に当たるわけだが、次作『トップガン』、そして『ビバリーヒルズ・コップ2』で世界的にブレイクすることとなる。「<あの>リドリー・スコット実弟」が撮ったというので、ワクワクしながら鑑賞し、そして予想通りに<あっち側>へ連れていってくれた『ハンガー』の印象がとても強かったためか、あらゆる要素があらゆる対象へおもねっている『トップガン』の衝撃は、そりゃもう言いしれないくらい大きかった。それだけに、メグ・ライアンのきゃわゆさに救われた事実が*5、ことさら重要だったりするのだ。

*1:こないだ<映画大好き!シネマ>な方と話しているとき、文脈上この作品を挙げたかったのだけれど、どうしてもタイトルが出てこなかった。

*2:<田舎司祭>からの、執拗な譲渡要求をくぐり抜けた逸品(笑い

*3:いま思い出したんだが、Dr.フィールグッドだったかウィルコのソロだったかに、ホームズ vs フランケンだかドラキュラだかってアルバムがあったような。探し出すのめどいんで、詳細は忘れたままちうことで。それより、内田春菊の『吸血少女対少女フランケン』ですよ。これはガチ。

*4:このあたり、怪人赤マントの逸話とかなり通じるものがある。ていうか、書いていて反射的に思い出したのが、星逢ひろの「袋おじさん」という漫画(『君を連れていく船』所収)。こういう話の原点みたいな古典がありそうだな。神話なんかにもでてきそうだし。

*5:http://d.hatena.ne.jp/skb_mate02/20050125