悲喜色の空

skb_mate022005-08-04

男女だろうと男同士だろうと女同士だろうと、人の繋がりは、いとも容易く切れてしまう。目に見えない糸が、あたかもそこにあるような振る舞いに疲れ果てて。それは、出し抜けに届けられる訃報に似ている。なぜおれは、それを受け取るまで<忘れて>いられたのか。そして受け取ると同時に、芝居がかった雷光を脊髄で感じ取るのか。それらをどうしても思い出せないまま、喪ったものへの追憶だけが、曖昧な自分の輪郭にグラデーションをつけてゆく。追いかけても、決して辿り着けない雲を見上げながら、おれは誰かの手を曵いて走っていた。もう少しで掴めそうな気がしたから、その手を離し、天にかざした手には、誰かの汗が残っていて。一陣の風が、その染みに絡み付いて去ったあと、少しだけひんやりとした感触をおぼえて、おれは辺りを見回してみる。もう、そこには誰もいない。ただ秒針の音を軋ませながら、空のてっぺんにかかった太陽が照りつけるだけで。おれは惚けたように、その手に残る痕をただじっと見つめている。周囲の空気が爆風を受けたように打ち震えるけれど、おれの耳にはなんの音も聴こえない。釣り上げられた魚の腹のように、鈍くひかるうねりが、埋めようのない<誰かのいた空間>を侵食してゆく。そして煤で満たされたかまどの中で、おれは豚の頭の被り物をつけ、膝を折ってうずくまる。お前らは、本当に阿呆だ。そしておれは、本当に馬鹿だ。何もかもが、呆れ返るほどにつまらない。そして何もかもが、愛おしさにキラキラと輝いている。