秘密の花園

skb_mate022006-02-22

『ファイブ・ガールズ・アンド・ア・ロープ』という91年の台湾映画をみました。ラストの真っ赤な花嫁衣装が鮮烈で、はっとさせられました。仲良し5人組の女の子が、女ゆえの苦しみから逃れるため、男に虐げられない伝説の花園へ旅立つというお話。ようは自殺するわけです。が、どうやら彼女たちは、死んだらほんとうに花園へ行けるのだと信じているっぽく描かれているんですな。相当エグいシーンが盛り込まれたシリアスな作品ではあるものの、「徹底的に少女たちを無垢に美しく」描くことで、改革解放政策以前における女性の人権問題を浮き彫りにしていこうという狙いなのか、とにかく女の子たちを追うカメラの目線と演出があざといです。お前はハミルトンかと小一時間問い詰めたくなります。そういう手法って、なんとなく『ひなぎく』っぽいですね。「5人の女の子が自殺」といえば『ヴァージン・スーサイズ』ですしね。同じ年、同じ原作を映画化した『五人少女天国行』という作品もあるそうで、そちらは本土で製作されたということもあってか、かなりファンタジックに描写されているようです。goo映画のあらすじによると、ラストシーンは「雲の中にそびえる山頂に向かって、5人の少女の花嫁行列がゆっくりと昇って行く・・・」*1となっており、モロに『ピクニック at ハンギングロック』を連想させます。
しかしまぁ、映画が好きですとか公言しておきながら、こういうおいしいネタを拾っていないあたり、やっぱ自分はヌルいんだなと思い知らされました。そういや数日前、『blue』に小津テイストを感じたと書きましたが、この作品でも彼の影響がみられたのがおもしろかったです。これでもかと言わんばかりに、ロングのフィックスショットがばんばん使われてます。で、ちょっと調べてみたところ、監督のイエ・ホンウェイは、ホウ・シャオシェンから強く影響を受けたとのこと。シャオシェンは自他共に認める小津ファンですから、なるほどというわけです。ちなみに、いまや小津の影響下にある映画監督は世界中に存在し、枚挙にいとまがないほどですが、周防正行の監督デビュー作『変態家族 兄貴の嫁さん』*2ほどストレートに信仰告白している作品は他にないと思われます。音楽を手掛けた周防義和は、監督と従兄弟の間柄。その後もコンビを組んでいます。


追記 現在のトップ画像に使っているバルテュスは、フェリーニから強く影響を受けたことで知られています。わたしは、フェリーニほど好きとか嫌いとかを超越した影響力の持ち主はいないと思っているのですが(なんせ「私は映画」ですからね)、小津もそうなりつつあるということでしょうか。