スキというかわりに しっぽがゆれるの

さきほど「ヴォストーク・カフェ Vol.1 ルイ・フィリップ・ライブ」から帰ってまいりました。なんかもうこの頃はどこへ行っても偏屈じじいのようにむっつりして楽しげな表情を見せることのないわたしらしいですが、ゆうべは掛け値なしに楽しくて仕方なかったです。ほんとに。BB5のカバーでウルッときたりね、もうまぎれもなくおっさんですね。主催されたザ・ペネロープスのwatanabeさんはじめ、関係各位はさぞや大変だったと思われます。心から楽しみました。素敵な時間をありがとうございました。そんなわけで、めんどくさいしもういいかと思って書きかけのまま放置してあった「わたしとルイ・フィリップ:chibinovaの場合」を改めて書いてみようと思ったのですが、それはまぁbghsや他の方々に任せるとして、自分なりのルイ・フィリップにまつわるような記憶のなかのレコード3選なんてのを(ものすごくひさしぶりに)ひとくさりぶってみようと思います。よろしければしばらくおつきあいください。


 Mathilde Santing / Breast and Brow
オランダのマチルダ・サンティンが89年にリリースしたアルバム。アズテック・カメラやトッド・ラングレンジョン・ケイル、ハリー・ニルソンあたりのカバーが収められていることからそっち系の人に人気の盤らしいのだけれど、そういうのを期待して聴くとかなり地味な印象を受けるジャジーなアレンジでまとめられています。ここで弦アレンジを担当したのがルイ・フィリップというわけですが。しかし特筆すべきは、この盤をプロデュースしたのが「ラムのラブソング」を筆頭に、数々のうる星ソングスをヒットさせた小林泉美であるという点。もともとフュージョン畑の出である小林泉美ですが、プロデュースをしてもらった縁でジャーマン・ニューウェイヴのホルガー・ヒラーと結婚。のちに離婚というあたりも含めてサディスティックなミカさんや飯島真理を彷佛とさせますが、とにかくどういう繋がりでマチルダ・サンティンのこういったフュージョンでもニューウェイヴでもないアルバムをプロデュースするに至ったかはまるでわかりません。そんなこととは無関係に、たまに思い出してはプレイヤーにのせる自分史的に重要な盤だと。


 Laila Amezian / Initial
おそらくルイ・フィリップがアルバム全編のプロデュースを手掛けた唯一の女性ヴォーカリストではないかと思われる、レイラ・アメジアンが96年にリリースしたアルバム。いかにもカフェDJに重宝されたっぽい(じっさい5〜6年前にデッドストックのアナログ盤が売られているのを目撃した)、分厚過ぎないオーケストレーションが心地よいボサ・ノヴァタッチの佳曲が揃ってます。なんとなくミュリエル・ダックとキャラが被りますが、ミュリエルのバッキングは微妙に音がショボいぶん、こちらの方が耳馴染みがよいです。ルイ・フィリップはほぼ同時期にリリースされたヴァレリー・ルメルシエの『シャントゥ』というアルバムにも参加しているのですが、なんといってもトラットリアからルイ・フィリップのベスト盤がリリースされたのがこの年ということで、日本でも彼の動向に再び注目が集まってたんじゃないかなと思います。


 HaLo / blue , HaLo / yellow
98年に放送されたアニメ『夢で逢えたら』の挿入歌に「心の翼」という曲があり、そのアレンジを手掛けていたのがこれまたルイ・フィリップでして、知ったときにはたいそう驚いたものです。作曲はさいきんの仕事ぶりがいまいち掴めない鴨宮諒*1。歌っていたのはEDの「風のような君でいて」も担当していたHaLo*2ことAyakoなるひとりユニット。この2曲はシングルとして徳間ジャパンからリリースされたようなのですが(自分はサントラで持っているだけなので)、それ以前にもファンハウスからシングルを1枚リリースしているようです。そして特筆すべきは、00年、01年にリリースされた『blue』、『yellow』なるアルバム。さいきん一気に胡散臭い単語として認知された「スピリチュアル」なイメージで制作されたというあたり、なんかエクトル・ザズーとかドリーム・ドルフィンみたいでおもしろいです。レコーディングに参加したメンツもルイ・フィリップやケイト・セント・ジョンとやたら豪華。


その他、おとなもこどももおねえさんも『マザー』のサントラとかシティ・ボーイズのサントラとかいろいろあるけれど、自分的にはまぁだいたいこんなかんじかなと。なんかもう重箱の隅を突つくようなことしか書いていないような気もしますが、日の当たらない道の端を歩むような人生を送ってるとこういうモンが愛しくて仕方なくなるんスよ、たぶん。でも「サニーデイ・サービス?あぁ、アニメ版『桜通信』のOPとEDをプロデュースしてた人たちね」なんて奴がいたら、まちがいなくうっとおしいなぁコイツって思うんだろうな。