少女ブルース

skb_mate022007-07-12

このあいだバンドのスタジオ練習が終わってからメンバーの連中としゃべっていて、どういう流れでかは忘れたけれど映画『タクシードライバー』の話題になりまして。案の定、わたしは当時13才だったジョディ・フォスターのことしかあたまになく、彼女がほぼ同時期に出演したホラー映画『白い家の少女』でみせた白い裸身のことばかり考えていたわけですけど、中学時代の友だちが、やたら『ディアハンター』にカブれていたことなどが思い出されてくすぐったい部分もあったりなかったり。そういえばミニハンドさんから「ロシアンルーレットをネタにひとつ短篇を書いてみないか」と持ちかけられたとき、即座に連想したのが『ディアハンター』でした。で、『タクシードライバー』のジョディに入れこんだ精神病患者が、レーガン暗殺未遂事件をおこしたのは有名なエピソードですけども、じつは『タクシードライバー』そのものが、『時計じかけのオレンジ』に感化されて暗殺未遂事件を引き起こした犯人の手記をモチーフに作られていたと。

この映画が公開された1972年、アメリカ人のアーサー・ブレマーという男はアラバマ州知事ジョージ・ウォレスの暗殺を図り逮捕された。ブレマーは自らの日記に「『時計じかけのオレンジ』を見てずっとウォレスを殺すことを考えていた」と書いていた。ブレマーの日記は後に出版され、日記を読んだ一人にポール・シュレイダーがいた。シュレイダーはブレマーの日記をモチーフに映画「タクシードライバー(マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演)」の脚本を書いた。(中略)暴力を暴力で風刺したこの作品は、皮肉にも新たな暴力を生んでしまったのである。
時計じかけのオレンジ - Wikipedia

時計じかけのオレンジ』にかんしては、いまさらわたしがあーだこーだいう必要をまったく感じないので割愛しますが、原作者のアントニイ・バージェスは、作曲家志望から文筆家への転向組ということもあり、わたしの思い入れもひとしおです。ショタ版アリスのエドガーきゅんが、マザーグース的ふしぎの国に迷いこむ『どこまで行けばお茶の時間』という作品がとくに好き。そしてスコセッシが敬愛し、その影響を隠そうとしないのが、それまでバレエなどをテーマにした薫り高い作品を次々と発表し、ヒッチコックやリーンとならび称されるはずだったにもかかわらず、『血を吸うカメラ』なる猟奇殺人者をテーマにした作品がボロクソに貶されてしまったことで、イギリス映画界を干された不遇の名匠、マイケル・パウエル

マイケル・パウエルという監督が『天国への階段』や『黒水仙』『赤い靴』などの文芸映画を撮った名匠だということ、しかし、『血を吸うカメラ』で批評的にも興行的にも大失敗して落ちぶれたことを、しばらくして本で読んで知ったのだった。(中略)本作は大衆レベルでは失敗作だが、マーティン・スコセッシブライアン・デ・パルマを始め、多くの映画監督に影響を与えたカルト・ムービーであることだけは確かである。
最低映画館〜血を吸うカメラ(PEEPING TOM)

上記ページの考察によると、『血を吸うカメラ』が捜査の様子や謎解きを主体とした古典的スリラーではなく、犯人そのものを描いた症例見本であり、説明的なパートを徹底的にはしょったスタイルが大衆の不興を買ったのではないかということです。それを足掛かりに推察しますと、犯人の視点から描かれているため、映画上で繰り広げられるインモラルな犯罪行為の数々を、まるで肯定する内容であるかのような印象を抱いたひとが多かったのではないかと。『羊たちの沈黙』以降、「犯罪心理捜査」や「プロファイリング」といった言葉でもって、大衆である我々もそれらを理解できるようにはなりましたが、当時のひとたちには、まさに脅威でしかなかったのかもしれません。


今週の我慢 こんなの出てるって知らなかった!欲しい!でも我慢!!

【白い肌に狂う鞭】イタリア・ホラーの巨匠、マリオ・バーヴァの代表作。主演に、名優クリストファー・リーを迎えて製作された、ホラー映画史に残る名作。撮影を名キャメラマンデヴィッド・ハミルトン(『ビリティス』)が担当。 【回転】ゴシック・ホラーの最高傑作。ヘンリー・ジェイムズによる原作「ねじの回転」を、トルーマン・カポーティが脚色。『華麗なるギャツビー』などの名匠ジャック・クレイトンが監督。 【生血を吸う女】ジャンル映画で傑作を残すジョルジュ・フェローニによるホラー映画の傑作。カール・ドライヤーの『吸血鬼』へのオマージュでもある。
映画はおそろしい ホラー映画ベスト・オブ・ベスト