星月夜


孤独な少女がフランケンシュタインのように怪物を造り上げてしまう映画『MAY-メイ-』を発表し、その手の好事家に注目を浴びたラッキー・マッキーの、長篇では2作目にあたる映画『The Woods』。UA資本でつくられたのだけど、けっきょく劇場公開は見送られ、DVDでの発売のみとなってしまった幻っぽい作品。『怨霊の森』なる邦題で、今年の1月に日本版もリリースされています。惹句の「『死霊のはらわた』シリーズのブルース・キャンベルも出演!」が微笑ましい。敬愛するダリオ・アルジェントの『サスペリア』へオマージュを捧げて企画された作品ということで、ニューイングランドの森に建つ寄宿制女子校を舞台に、それっぽいモチーフをこれでもかとブチ込んだ「お前、こういうのが好きなんだろ(笑)」的なサイコホラー。従って、このあいだDVDがリリースされた『エコール』とも雰囲気が近いですね。ただ、『エコール』が原作としたフランク・ヴェデキンドの『ミネハハ』が『サスペリア』の原作でもあるというのはルシール・アザリロヴィックの事実誤認で、実際にはトマス・ド・クインシーの『深き淵よりの嘆息』であり*1、映像的には『白雪姫』のイメージがベースとなっているわけですが。そういえば、何年か前にbghsが『サスペリア』のサントラを買っていたけれど、あれはわたしが推したのを汲んでくれてのことだったのだろうか?そして2年ほど前に手塚眞が撮ると明言していた美少女ホラー映画は、もう完成したんだろうか?ていうか、ずっと『サスペリア』に言及しているけれども、当時リアルタイムで観て、その後もずっと自分のベースになり続けているのは『フェノミナ』なんですよね。こちらは映像的にレニ・リーフェンシュタールの作品をベースにしているとのこと。もちろんわたし的に重要なのは、チューリッヒの寄宿制女学校を背景にしたジェニファー・コネリーなんですけど。ジェニファー・コネリー的には、これと『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を押さえておけばだいたいオッケーです。『ゴッドファーザー』の2番煎じなどと揶揄された『ワンス・アポン〜』ですが、「ひとりバレエの練習をするジェニファー・コネリー」というカットを入れたその1点において、わたしの中では「ヒステリーをおこして皿を割りまくるタリア・シャイア」に萌える映画だった『ゴッドファーザー』に大きく水をあけているのです。ちなみに『トップガン』も3度ほど観にいきましたが、それはもちろん「亭主に死なれて悲嘆に暮れるメグ・ライアン」と「コックピット内に居並ぶスイッチ群や計器盤やコンソール」*2に萌えるためです。『狼の血族』や『レジェンド/光と闇の伝説』は、ヒロインのヰタ・セクスアリスを描いた映画なんですってば。そういや先週、『ひめゆり』というひめゆり学徒隊生き残りの方々の証言を記録したドキュメンタリー映画を七藝へ観にいきました。ええ、女学生が好きなので。え、もういいって?いや、駅前にできたばかりのレンタルビデオ屋に置いてある字幕なしの海賊版を借りまくったり、商店街のピンク映画館兼業の名画座へ通いまくっていた頃が懐かしくて、つい。あと、去年放送されたらしい『5ive girls』というカナダのテレビ映画。ジュネ&キャロ作品の常連であるロン・パールマンも顔を出しています。カトリック系寄宿制女学校に送り込まれた5人の少女たちが、悪魔崇拝や呪術に遭遇、生き残りをかけて戦うゴシックホラー。『怨霊の森』に通じる部分が多々あるものの、これはむしろ『エコエコアザラク』的かなと。で、エコエコといえば百合の香りなんですが、『5ive girls』にもガチ百合なマラという強気キャラがひとり配置されていて、しかもアレックスというノンケな主役級のブロンド美少女と想いが通じあうみたいなんですよ。これは日本版DVD未発売なので、とにかく出てくれることを祈るしかないですね。

YouTube - 『怨霊の森』予告編映像
YouTube - 『5ive girls』予告編映像

*1:確かめたわけじゃないけど、恩田陸の『三月は深き紅の淵を』はこの作品をベースにしているんじゃないですかね。タイトルだけかもしれんけど。ちなみにミニハンドさんからいただいた文庫版では、解説を日本ゴシック界の女王である皆川博子が書いており、嬉しいサプライズでした。『ゆめこ縮緬』の装丁も含めた素晴らしさとか、いまだ記憶の中で色褪せないなぁ。

*2:その昔、用途もなく中古の魚群探知機を買ったことがあります(笑)。スイッチや計器萌えがどれぐらい罪深い趣味なのかは、宇宙開発技術者である水城徹さんが書かれた「長岡アーティファクツ見学」レポートを参照ください。ソユーズ再突入カプセルかぁ。無人であったはずのソユーズ2号に、じつは宇宙飛行士イストチニコフと犬のクローカが乗り込んでいたというジョアン・フォンクベルタのフィクションをもとにした新居昭乃の「スプートニク」、いい曲ですね。この曲の主人公で、クローカに呼び掛けているのは、スプートニク2号で生命体として初めて宇宙へ行った、牝のライカ犬として知られるクドリャフカ。Keyの新作『リトルバスターズ!』に同じ名前をつけられたヒロインがいますが、クドが地球へ生還することはありませんでした。