愛すべき娘たち

愛すべき娘たち (Jets comics)

愛すべき娘たち (Jets comics)

娘と母、娘と祖母、母と祖母。男女の愛、肉親の愛、学友の愛。双方向の愛、一方向の愛、全方向の愛。女という不思議な存在のさまざまな愛のカタチを、静かに深く鮮やかに描く。(背表紙より)

まずタイトルに惹かれ、かつ『大奥』がたいへんおもしろかったこともあって買ってみました。多分にフェミ的な要素が全編を覆っているのだけれど、それらが各キャラクターの考え方としてきれいに落とし込まれており、押し付けがましさを感じないあたりにさすが、と唸らされます。そして第4話と最終話では、思わずウルウルきてしまいました。花かんむりを編みながら、働く女として生きていこうと草の上で語り合ったかしましい3人の少女たち。やがて成長し、おとなになった彼女たちは、現実との折り合いをつけあぐねてもがきます。編集者を目指していた牧村は自分の資質に見切りをつけて専業主婦になり、公務員を目指していた佐伯は採用試験に失敗し、派遣社員をしている。そこへひとり女子校へ進学し、それ以来音信の途絶えていた如月から、佐伯のもとへ一通の手紙が。そこには、「先日結婚いたしました。家庭内の男女平等は中々うまく行かないけれど、それでも何とか仕事は辞めないでがんばってるよ」と。それを読んで、「あの時話したささやかな夢をかなえたことのできた友達が、ちゃんといたんだ」と涙する佐伯。百合な物語を紡ぐ上でも、女性の経済的自立と社会的な地位の安定は、つねに大きな課題としてカップルの行く末に立ちふさがります。たとえば、『メイド諸君!』(きづきあきら+サトウナンキ)の蜂矢さんと愛理さんの関係に、顕著にあらわれていますね。その問題を巡って、しょっちゅう喧嘩をしていますし。それだけに、もっと知識や考えを深める必要があるなぁと痛感します。人と人、そしてその関係が描かれる以上、生活から逃れることはできない。価値観や倫理観もさまざまです。ニーバーの祈りじゃないですが、ほんとうに譲れないことはなんなのか、こだわるだけ無駄なことはなんなのか、真摯に見極めていくことが重要ですね。


リリイの籠

リリイの籠

女の子同士って、むずかしいけれどやっぱり特別。絵のモデルを頼んだ加菜に、憧れにも近い感情で惹き付けられていく美術部員の春(「銀杏泥棒は金色」)。生意気な女子生徒・由貴に、こっそり大切な思いを打ち明けてしまったえみ先生(「ポニーテール・ドリーム」)。容姿の劣る親友・実枝に彼氏ができ、穏やかでいられなくなる里加(「いちごとくま」)。女子高を舞台にキラめく感情の交差を描き出した、書下ろし1編を含む全7編。(版元の紹介文より)

2005年に出版された『檸檬のころ』が映画化され、今年3月に公開されたことで、青春小説の旗手として注目を集める豊島ミホの最新作。これまでも、とにかく女の子にこだわった作品を書いてきた彼女らしく、『リリイの籠』というタイトルからも想像できる通り、「ゆうちゃんはレズ」という直球のタイトルを冠した短篇も含まれているとのこと。刺繍やビーズなどをあしらった、少女趣味な装丁が施されているらしいあたりもそそります。かわいくてキラキラで、でもやっぱり残酷な、自然体の百合が堪能できそう。ていうか、作者本人のコメントが激烈に期待させてくれるんですよ。

『リリイの籠』には、女の子に対する反感(同族嫌悪的な)も、逆に同性としての理解も、書き手の感情としては入ってないんです。多分。憧れだけです。外側から見てるぶん、冷静な観察も入ってるかもしれないけど、「ほんと女はこういうとこが汚らしいのよ、きい〜」って感じじゃなく、「そういうとこがあっても女の子はかわいいよね!」って感じになってるはず。つまり……え〜、女子萌え本なのです! キモいまとめ方になった! どうしよう。
告知板としま:新刊情報(12/19)

なんつーか、それなんていう長年連れ添った奥さんがつくってくれる味噌汁の味?ってな具合ですね。でまた、最後の一文がかわいくてしょうがないんですけど! 思わず、み、みーっ、ミアアーッ!! ミアーッ!!と叫びたい衝動にかられたりかられなかったり。これは迷わず買い、ですな(モノポリーっぽく)。いや、むしろ売れて欲しい。もっとこういう本がどんどん出て、どんどん売れて、なおかつ高く評価されればいいと思います。そうすると、わたしが喜びます。嬉しいもんだからじゃんじゃん買う。そうして経済が活性化・・・しないか(一部『ミーナの行進』の感想文をリサイクルしています)。