ガールズ・ブルー

たぶんこれが年内最後の更新になると思います。みなさま、よいお年をお迎え下さいね。さて、『電脳コイル』熱もいまだ冷めやらぬなか、少年少女ドラマ再びと銘打って、昨日から3日連続で『夕陽ケ丘の探偵団』が放送されるこの事態は、もう快挙というほかないわけですが、これはいよいよ「ドラマ・愛の詩」復活への布石であると見做してよいのかもしれません。そこへきて、あさのあつこ原作「テレパシー少女『蘭』事件ノートシリーズアニメ化」の報が入って参った次第、わたしの興奮はもうピークの8合目あたりを迎えているのです。

『バッテリー』で脚光を浴びる作家あさのあつこさんの「テレパシー少女『蘭』事件ノート」シリーズをアニメ化します。友情、信頼、そして初恋。蘭たちのピュアな青春を描き出し、心と心の交流の大切さを鮮明に描いていきます。どうぞご期待ください!
NHKアニメワールド:テレパシー少女 蘭

わたしはこのシリーズを、いーだ俊嗣のコミック版でしか読んでいないのですが、『電脳コイル』以上に『六番目の小夜子』的な物語だと思っていただいて差し支えありません。「2007-08-22 キミのかたち」にて取り上げました通り、主人公である蘭、彼女と同じ能力を持つ美少女転校生、翠の間に芽生える百合要素もバッチリ入っています。前述のコミック版では、なんとキスシーンまで飛び出します。翠は蘭の兄に恋しているという設定なのですが、そんなものはアリバイです。翠は兄にかこつけて、蘭と一緒にいたいだけなのです。とまぁ電波な発言がダダ漏れてきたあたりで、あさのあつこ作品のおすすめをふたつほど。


ありふれた風景画

ありふれた風景画

十代って残酷な年代だ。出会いも別れも生々しく、儚い。ウリをやっていると噂をされている高校2年の高遠琉璃は、美貌の持ち主で特異な能力によって噂に上る上級生、綾目周子に惹かれていく…。傷つき、もがきながら生きる少女たちの1年間を描くみずみずしい青春小説。(版元による紹介文より)

あさのあつこは、映画化もされた『バッテリー』という代表作に象徴される通り、やおい妄想をするなというほうが不自然な作風を持ち味としています。そしてそういう作家は、キャリア中、必ずいくつかの百合作品も生み出すものです。それがこの『ありふれた風景画』というわけですね。そして、いーだ俊嗣版『テレパシー少女 蘭』へ「蘭が艶っぽく描かれていて素敵」というコメントを寄せていることからも伺えるように、読むものへ色っぽさや感傷を一切感じさせないのも特徴です。男の子メインの作品を読んでいないのでなんとも言えないのですが、男の子よりも女の子のキャラクターに対して、より凛とした生き方を求めているのではないでしょうか。

ごく普通の少年少女が、既成の概念からはずれていく、つき破っていくところを書きたいし、また、そんなエネルギーやパワーを、私は男の子よりも女の子のほうにより強く感じるんですね。少年というのは、脆くて、誰かがいないと生きていけない気がするんですが、少女はたとえ相手がいなくても、自分の足で立って前に突き進んでいくというパワーを持っていて、閉塞的な世界の中でアップアップしながらも、その壁をばりばりとぶち破って広げていくエネルギーを持っていると思うんです。
あさのあつこロングインタビュー - 「成長物語」でない十代を描く

そんな作者が「あえて」女の子同士の恋愛をガッツリと描いているわけですから、それはもう、なにかの結晶の如く硬質な透明感に満ち溢れた内容となっております。甘々でラブラブももちろん大歓迎なのですけど、そればかりでは頭の中がメタボってきますから。ていうか、こうした漠然とした不安へがむしゃらに突っかかっていく女の子のパワーを目にすることで、自分も力をもらっているんだろうなと思います。男の子はどうしても「いまのは全力の30%だぜ」的な根拠のない自信を抱きがちだからなぁ。そのへんが、リアリストな女の子とロマンチストな男の子の違いなのかも。ま、あくまで「フィクション上で」の話なんですけどね。


ガールズ・ブルー (文春文庫)

ガールズ・ブルー (文春文庫)

いいじゃん。あたしたちには愛がある…。ごくフツーの、しかし過激な地方都市の高校生、理穂、美咲、如月。それぞれの夏がはじまった―。今を精一杯生き、葛藤と矛盾を抱えたプライド高き劣等高校生の、リアルで切ない青春群像小説。(版元による紹介文より)

『ありふれた風景画』の前身となったのが、この『ガールズ・ブルー』。文庫版のカバーイラストが内容のすべてを物語っている、女の子同士のベタベタしないドライな友情を描いた作品です。タイトルもすごくいい。


17才 [DVD]

17才 [DVD]

放課後はキャバクラでバイトをしながら高校に通う17才のアコ。学校では居眠りばかりでなんとなく毎日を過ごしていた。4月、成績優秀な18才のリョウが何故かダブってアコのクラスにやってきた。自由で不思議な魅力を持つリョウに憧れを抱き、彼女と接していくことで、アコのなかで少しずつ何かが変わりはじめていた。そんな時、隣のクラスのヒトミが自殺未遂を起こす…。
17才(2002) - goo 映画

『ガールズ・ブルー』を読んでいて連想したのが、女優・猪俣ユキが「自分たちの見たい映画を自分たちで撮りたい」と企画した自主映画、『17才』。あらすじをぱっと見ただけだと「『ラブ&ポップ』と大差ないじゃん」とか言われそうですが。


追記 きのう『リリイの籠』を買ってきました。で、そのときずっと読みたいなと思っていた宮木あや子の『花宵道中』が目についたんで、思わず衝動買い。さっそくそちらから読み始めてみたのですが、こいつぁすごいですわ。なんか宮尾登美子っぽくてグッとくる。帯の「角田光代さん、三浦しをんさん絶賛」という煽りは伊達じゃないなと。もう読まれた方、これから読まれる方は読了後に、ぜひ岩井志麻子の『女學校』もあわせて読んでみてください。せつなさが暴走を始めると思いますゆえ。