死と乙女

1. テレビをつけると、たまたま「私のこだわり人物伝;澁澤龍彦 眼の宇宙」という番組の再放送がかかっていて、金子國義がインタビューにこたえていました。澁澤との出逢いから『O嬢の物語』の挿絵を依頼され、そして個展をプロデュースしてもらうに至った経緯をかいつまんで話していたのだけれど、最大のトピックは、澁澤が個人的に注文し、大枚を出して買い取ったという作品「花咲く乙女たち」にまつわる逸話。
金子國義 - 花咲く乙女たち
作品を描き上げた金子は兄とふたりでそれを抱え、澁澤邸への坂道を汗だくになりながら登って納品したそう。そして澁澤が亡くなったとき、四谷シモンとふたりでその棺を抱えて坂道を降りながら、かつて「花咲く乙女たち」を抱えて坂を登ったことを思い出したそうなのです。そしてわたしは、そういう話が大好きなのでした。そんなことを考えつつ、その昔「金子國義がお好きでしたよね?」とトーン・テレヘンの『誰も死なない』をプレゼントしてくれた女の子がいたことを思い出したり。



2. 兵庫県立美術館へ、帰省中の奴股とムンク展を観にいきました。彼は、10年ほど前のムンク展で購入した「死と乙女」のポスターのオリジナルを観ることができたと感激。いっぽうわたしは、20年前にオスロ市立ムンク美術館を訪れたおり、代表的な作品群が京都などへ貸し出されており、微妙な気分を味わわされたことのリベンジを果たすことができたような気になって上機嫌。エントランスに「声」という作品(画像左上)の2メートル四方はあろうかという巨大なタペストリーが飾られているのに「白いワンピースに白樺林に湖ってなぁ、もうまんまやん」「まさに堀辰雄の世界やなぁ」と大騒ぎ。ムンクがフレイア・チョコレート工場の社員食堂の壁画を手掛けたという逸話には、「チョコレート工場ってのがいいやね」「フレイアやでフレイア、北欧神話いちばんの美女神やで」「しかも女子用食堂だけ完成して、男子用食堂は未完ってなぁ」などと傍迷惑に興奮。彼がボードレールの『悪の華』の挿絵を描いていたことも知りませんでした。1時間半ほどかけて鑑賞したのち、館内のレストランでランチ。場にそぐわない話題でさんざん盛り上がってから解散しました。




3. ムンクと同世代で、交流もあったデンマーク出身のエミール・ノルデをついでに。
エミール・ノルデ - Wikipedia