少年少女 その1

正しい乙女になるために それいぬ (文春文庫PLUS)

正しい乙女になるために それいぬ (文春文庫PLUS)

奴股:嶽本野ばらの『それいぬ』、面白かった。ありがとう。

chibinova:けっこうシンパシーおぼえるんちゃうかなと思ったんやけど。

奴股:共通するものが多かった。徹底した浪漫主義者やなあ、と。

chibinova:そうやな。おれも半分ぐらい「あー」って思って、半分ぐらいは「?」やったわ。

奴股:痙攣するような世界否定、他者の否定も、牧師としては理解できるけれども、やっぱり共感は難しいなあ。こないだの日曜日も、高畠華宵を見てきた。季節ごとに展示物が変わるからね。

chibinova:でね、嶽本野ばら読んでいていちばん感じたのは、「これって、思いっきり男の発想だよな」ってこと。

奴股:そうやね。文章の多くが恋文の形をとっているし。

chibinova:で、美輪明宏とかもそうじゃない。

奴股:美輪氏は、文章をちゃんと読んだことがないから分からないなあ。

chibinova:じゃあちょっと一例を挙げてみようか。

美輪さんは、「あなた、まだ結婚したいと思ってるの?」と先制攻撃。そして、さんまさんが女性に対して持っている理想は虚しいと切り捨てた。「あなたが好きなようなね、しっかりしているけど頼りなさそうな、保護本能をそそるような、そんな女は(いない)。私がこの歳になるまで、弱い女と強い男は見たこともない」。その言葉に驚いたさんまさんが、美輪さんに対し、「女になろうとして生きてこられたわけでしょ?」と聞き返すと、「女になろうと思ったことなど一度もありませんよ! 言ったこともない! あんなもの、誰がなろうと思うもんですか!!」と激昂。女性の欠点を興奮気味に次々と口にした。美輪さんが女性を嫌いなのは、無神経でふてぶてしくて、繊細さが無くて、ドーンと強い、ことなどだ。しかも、女性には、「でも」と「しかし」の切り札があって、それを後ろにずっと隠している。負けそうになると水戸黄門の印籠のように出してくるのだそうだ。美輪さんが例として挙げたのは、巨乳の女性が現れたとき。「うらやましい」「スタイルがいい」などと褒めるが、結局、「でも、あの人、頭悪そう」に持っていき、「負けない」状況を演出する。男性は、「でも」も「しかし」も無いが、劣等感の塊。そして、「いい男」が全部嫌いなのだそうだ。日本の芸能界でもディレクター、カメラマン、脚本家達は「いい男」が嫌いだから「いい男」のスターが出てこない、と独自の分析。「だから韓国から輸入しなければならなくなっちゃったのよ」と笑って話した。女性バッシングに続き、男性に対しても厳しい意見が出たところで、さんまさんが、「男性になろうとも思わなかった?」と訊いた。美輪さんは一瞬口ごもり、人間を見るときには、男や女というのはどうでもいいことで、「心の状態」が大切だ、といって、話をはぐらかした。そして、自分の周りには天才がワーッと集まってくる、と有名人の名前を列挙した。江戸川乱歩、17代目中村勘三郎三島由紀夫川端康成五木寛之大江健三郎の名前が出たが、その中に女性は一人もいなかった。
J-CASTニュース - 「女になろうと思ったこと一度もない」 美輪明宏、実は女性が大嫌いだった

chibinova:たしかに女性はひとりもいない。けど、わかる人にはわかるっつう。

奴股:なるほど。ジェンダーの多様さのなかの、ある一面に美輪さんは立っているわけだな。

chibinova:なんつーか、「ホモが嫌いな女子なんかいません!」っつうの、まんざらネタでもないっていうか。おれが川端康成のことを書くときに引いてきた「新宿二丁目のほがらかな人々。」っていうページね、やっぱ読者の9割が女の人なんだって。しかも本になってて。きのう古本屋で見た。

奴股:へえ。女性から見た男性性のイメージを解く重要な要素なんだろうなあ。