ペンテジレーア

ペンテジレーア (岩波文庫)

ペンテジレーア (岩波文庫)

『水妖記』熱に浮かされ、いろいろ調べていて見つけたのがクライストの『ペンテジレーア』。

トロイア戦争から発想した18cドイツの劇脚本。ペンテシレイアファンの私としては読まないわけには行きません。がしかし、どうにもこうにも・・・。まず、このペンテジレーアには愛がわきませんね。ちょっと百合の香りがするし。女王の貫禄がない。恋に狂っちゃってる場合か、このあほ娘! とか思う次第。わがままだし、かわいげないし。第一、アキレウスなんかに惚れちゃうし・・・。いや、それはともかく、アマゾネスが、トロイアの救援に来た訳じゃないって言う時点で、感動はわきませんよね。自分らのために男漁りに来ただけ、トロイアの悲惨なムードも気にすることもなく、自分のために戦に励むアマツォーネ。これじゃ、ヘクトルも浮かばれません。
RAJAとケルピのTRPGトーク - 読書11

そう、アマゾンですよ。あ・ま・ぞ・ん。灯台もと暗しとは、まさにこのこと。わたくし「2008-02-06 ばら物語」にて「女騎士を主人公に据えたヒロイック・ファンタジーはほとんど思い浮かばない」などとたわけたことをぬかしてしまいましたが、ついこないだも読んだ『ニーベルングの指環』にはヴォータンがエルダとの間にもうけた9人の戦乙女、ワルキューレがいますし、そしてギリシア神話にも、ペンテシレーア女王率いる女人族、アマゾンがいるではありませんか。まったく迂闊でした。上記の感想文は「あまりおすすめできない」的に結ばれていますけれども、わたしとしてはもう百合の香りっつう時点でアリアリの方向。で、あらすじを読んでみますと、どうもゴダールの『ウィークエンド』っぽい内容なんじゃないかと思われるわけです。だもんで、ウィキペディアで作者のクライストのことを調べてみました。

クライストはアーダム・ミュラーと共に1808年1月『フェーブス』を創刊した。この創刊号に「悲劇の断片:ペンテジレーア」として『ペンテジレーア』の一部が発表されたのだが、この号を受け取ったゲーテは返信の中で作品に対する驚きを表明しながらも理解できなかったことを伝えている。
ハインリヒ・フォン・クライスト - Wikipedia

カントの『判断力批判』を読んで何を標とすべきかがわからなくなったり、「自然へ還れ」のルソーにカブれて農民を志し、婚約者から破談を言い渡されたり、死に場所を求めてドイツ人であるのにフランス軍へ加わったり、スパイ容疑で収容所送りになったり、最終的には社会的成功とまったく無縁のまま、苦しい生活と絶望に堪えかね、癌を患った人妻を道連れに拳銃自殺と、なんとも激しい人生を送った人なのだそうです。(アンゴル・モアふうに)ていうかクソまじめすぎ? で、これまた興味を引かれた記事をひとつ見つけたので、以下に。

単純な連想ではありますが、ドイツの作家ヘインリヒ・フォン・クライスト(1777〜1811)の「マリオネット芝居について」というこれまた見事なエッセイのことを思い出しました。クライストは、自意識に縛られていない操り人形の動きこそ、人間の限界を超え、神の運動に近い動きをしているのではないか、と指摘したのです。
Swiftiana - 甜茶、文楽、クライスト

これって、シュルレアリスムオートマティスムを100年近くも先取りしていたことになるんじゃないでしょうか。むかしノイバウテンが自動ページめくり機かなんかを楽器として使っていたような記憶がありますけど、それもクライストの延長線上にあったということなのかしら? ドイツの血脈がなせる技(業?)とかなんとか、また感傷に身を浸してしまいたくなります。えんい〜