やさしい手

skb_mate022008-02-23

イニシャルBBといえばブリジット・バルドーだが、いや、バート・バカラックでしょというあなたはちょっとひねくれている。いやいやベティ・ブープでしょ、というあなたは相当ひねくれている。ビリー・バンバン、は名前を聞いたことがあるぐらい。流行歌手かなにかでしたっけ。そんなわけで、アン・イブニング・ウィズ・バート・バカラック大阪公演@フェスティバルホールへ行ってきました。11年ぶり、4度目の来日だそう。ぶっちゃけこのコンサートがあることを知ったとき、「マリブあたりで悠々自適の引退生活を送っているのであろうバカラックが、この期に及んで来日するということは、これすなわちさよならコンサートであるに違いない」というような憶測から、取るものもとりあえずチケットを買い求めた次第。だが彼は、80才にしてまだ現役バリバリだったんですな。引退? なにそれ、美味いのか? って具合らしい(笑い)。で、2度寝して目ざめた頃にはすでに開場時刻。あわてて四ツ橋へ急行。席は2階のうしろのほうだったけれど、ほぼセンターなので別に文句はなし。セットリスト等は他に書かれる方がたくさんいらっしゃるでしょうから割愛します。以下リンク先とか詳しい。
フロクトパヤジ - What the world needs now is love, sweet love
野宮真貴のおしゃれブログ - 最近。。。
でも、ピアノのAでオケのチューニングが始まったとき、ふいにぶわっと鳥肌が立ったんですね。わたしが生まれて初めてホールでコンサートを聴いたのがこのフェスティバルホール、わたしの記憶が正しければ大阪フィルの公演だったというのもあるんでしょうけど(とにかくトイレを我慢するのに必死だった、笑い)、なによりもアメリカの作曲家で、わたしがこの先、終生無条件に崇拝するのは、コール・ポーターヘンリー・マンシーニ、そしてこのバート・バカラックしかいないであろうという事実を、そのときふいに思い出したんですよ、たぶん。前回の公演には行けなかった(ブライアン・ウィルソンも2度見送ったし)わけですから、おそらく彼の演奏へじかに触れるのは、これが最初で最後だろうと。しかも、フルオケでの演奏はこれが初めてだという。ヘプバーンが亡くなり、それからほどなくして、友人のライブへ行った帰りに立ち寄ったラーメン屋の新聞でマンシーニの死を知ったときの感傷が、まるで昨日のことのようにまざまざと蘇ったりしてね。だもんで、1曲目の「What the World Needs Now is Love」からもうほぼトランス状態で、あっという間に2時間が経ってしまったというかんじ。なんかもう好き嫌いってレベルじゃねーぞ、わたしがちっちゃな子供で、すごく優しい目をした大人の男の大きな手で、ひょいと肩へのせられてくしゃくしゃっと頭を撫でられたような、そんな気分。なんですかその包容力は、みたいな。いかに自分が凡人かを思い知らされたのに、なんだろうこの清々しさは、とか。

彼がいなかったら、わたしの作る音楽はきっとこんな風じゃなかったと思う。でもって、同じように思う音楽家は、世界に4万人ぐらいいることも知っている。現役でいてくれてうれしい。 ―矢野顕子

上記は、パンフレットへ掲載された矢野顕子のコメント。新居昭乃への菅野よう子のコメントぐらい最高なんで、最後に引いておきます。