gd are for girl detective

skb_mate022008-07-09

奴股:『ひだまりスケッチ』をこっちでも有線でやってて。面白かった。来週は特別編らしい。最初は「なにがおもしろいんやろ」と思いながらも、だんだん見ているうちに病みつきに。とくに、主人公が熱出して寝込んで夢を見る話など。映像すごいよね。あと、脚本というか、会話の間合いもほんとテンポがいい。で、なんかみょうにエンディングテーマが雰囲気にあってて。あれはサントラ買ってもいいかもしれんな。

chibinova:おれもゆのが風邪ひく話はすごく好き。あと、なんといっても最終話がよかった。沙英の妹、あれやばいね。かわいすぎる。ダーリンの妹だけあって、メロメロになるヒロがまた素晴らしくいいんだよね。

奴股:ビートルズのアニメあったやん。サイケっぽい。あれ思い出したりしてな。

chibinova:イエローサブマリンね。

奴股:そうそう、それ。ところどころ写真が挿入されたりするのも好感を持った。そういや『LOVELESS』も最終回観たけど、最終回は大して面白くなかった。君が言ってたように、その2話前だったか、あれが最高だったね。同性のもつ友情というか絆みたいなものを、あれだけ奇妙な世界観のなかで、ほんとうに自然に描いてたね。

chibinova:けど、あれはやっぱりBL語法だと思うよ。

奴股:そういう語法ってあるの? どういう感じの枠組み、というか語法なんだろう。エスそれ自体を描く、というのとどう違う?

chibinova:こないだバンドの練習のときにもメンバーに滔々と語って聞かせたんだけど、男子同士ってのは他者性を保持したまま強固な関係を築くことができるじゃない。切腹ナルシズムみたいな、己を公のために滅する美学、自己犠牲の美学みたいなものが根底にあるためじゃないかと思うんだけど。でも、女子同士だとそうはいきにくい。彼女らが強固な関係を築くためには、相手の中に自分を見出さなくてはならない。相手を自分の半身であると見做すプロセスが必須なんじゃないかと。共感から同化へ到り、外側を拒絶する、結晶化するような美学というか。

奴股:なるほどな。『LOVELESS』のあの話の場合は、女子同士だけれども他者性が強く保持されていた、と?

chibinova:というか、BL語法ではそもそも他者性が保持されつつカップルが成立するケースが極めて稀だと思う。だって、男子同士とはいえ、女子にとって理想的な二個一のありようを描いているわけだから、あまりリアルな男性性というものは重要視されないんじゃないかと思うわけ。だからそういうものを求める人は、少年漫画やアニメのパロディを好むんじゃないかな。男性向きエロ漫画に出てくる女の子が、どう考えてもリアルでは存在しえないのと同じ。

奴股:『LOVELESS』の女の子同士はBL語法である→しかしBLにおいては男同士のリアルではない、むしろ女性性があらわれている→つまり、『LOVELESS』の女の子同士は真の女の子同士である、ということになるのかな。

chibinova:すごくまわりくどいけど、理屈ではそうなるね。でもそうなってくると、もはや両性具有と捉えたほうがしっくりくるのかも。

奴股:アンドロギュヌスか。今、ジュネの『葬儀』ってのを読んでいるがあれに出てくる青年は、語り手「わたし」を除いて立夏に似てるなあ。男性作家なのに。

chibinova:ジャン・ジュネってたしかゲイじゃなかったっけ?

奴股:ジュネ読んでても、『ひだまりスケッチ』観てても共通するのは、切り取られた日常の、あっちを描いたり、こっちを描いたり。で、話はぜんぜん前に進まない。そういうのがおもしろい。小さな断片、みたいなものの寄せ集めをじっくり味わいたい。仕事柄、よけい「ちいさなもの」に向かう傾向が強くなってきたし。もう大きな物語はうんざり、男性的発話に疲れる日々やね(笑)。

chibinova:そういうもんですか(笑)。ていうか、やっぱ女の子は最強だね。何言っても何やっても許せる気がするよ。

奴股:そうやな。わたしは少年も好きだけど(笑)。

chibinova:そういえば、こないだbghsと岡崎京子の『リバーズエッジ』の話をしててね、あれに出てくるビアンでモデルのこずえちゃんってキャラのことをおれがああだこうだ言ってて。で、bghsが「や、あれはいいキャラですよ」って言うから、「でもbghs的にはやっぱりゲイの山田くんのほうがグッとくるでしょ? 作者的にも彼にいちばん感情移入して描いてるだろうし」って言ったら、「いまハッとしましたわ」って(笑)。

奴股:そうそう、そんな感じやな。『リバーズエッジ』ってのは残念ながら知らないけど。少年、というか、少年の硬質な身体というか。けっきょくは実在しない身体なのだろうけれども。

chibinova:なんでよ、前に送ったよ、『リバーズエッジ』。作中にウィリアム・ギブソンの引用が出てくるやつ。

奴股:あれ(苦笑)、すまぬ失念。そういえば、こないだ夜中に越路吹雪岩谷時子の友情を再現した演劇を放送してて。あれなんか、あくまで「舞台」としての解釈なんだろうけれども、すごくエス的な世界だったなあ。池畑慎之介が越路の役で、高畑淳子岩谷時子の役。

chibinova:それは観てみたいなぁ。他に何かおもしろかったものとかってある?

奴股:丸尾末広の『パノラマ島奇譚』てのもよかった。谷崎潤一郎の『金色の死』の映像版だと思ってもべつに違和感ない。明智がいてもいなくてもいいぐらいちょこっとしか出てこなかったところに、丸尾氏の着眼点の軽重を見て興味深かった。いや、原作でもそうだったかな? 花輪和一初期作品集ってのも買ったけど、これはちょっとしんどかったなあ。

chibinova:ほうほう。以前ブログにも書いたけれども、乱歩とデキてたって噂の美青年で、日本の男色史を研究していた岩田準一って人がいてさ、夢二のもとで修行をした絵描きでもあるんだけど、なおかつその人の孫娘が、おじいちゃんと乱歩でいけない妄想して小説書いてんの(笑)。もちろん南方熊楠もでてくる。

奴股:へえ、そんな人が実在? (ウィキペディア岩田準一の項目を閲覧中) ほんまや。すごい人がいたんやなあ。折口信夫ぐらいしか知らなかった。

chibinova:岩田準一は、リアル美青年で、しかも夭折したってあたりがポイント高いんだよ。なんならきみもこの路線目指すか? ヘッセの『デミアン』みたいなやつ書こうぜ。

奴股:(笑) 胃潰瘍で死去って、なんか夏目漱石みたいやな。むかしは胃潰瘍って死ぬ病気だったんやなあ。

chibinova:そうやなぁ。ちなみに漱石の『こころ』もヤオラーの聖典っていわれてるね。

奴股:あ、ほんまや! 灯台下暗し。