地獄へ道づれ

skb_mate022009-07-27

1. きのう、うちの人とあかりさんを伴って『MW』を観てきました。どういう事情でかは知らないけれど、原作にある同性愛関係が根こそぎなかったことにされているのは最悪(裏設定では生きているらしいけど・・・伝わらなきゃ意味ないよ)。恋愛要素をまるまる消去されてしまったわけで、なにゆえ神父が苦悩しつつも結城の言うなりになるのか、そのへんの説得力がまるでなくなってしまったんじゃないかと。自分の命を救うために神経ガスを吸い、そのため後遺症が残ってしまったことへの負い目から? いや、自分を引き取って育ててくれた亡き神父への恩義のほうが大きいでしょ、常識的に考えて。そのうえ信仰心うんぬんを持ち出しても、特に日本人にはぴんとこないのはわかるので、仕方ないといえばそうなるのかなぁ。同行者ふたりは原作未読ということもあってわりと楽しめたようで、終わってから結城役の玉木宏のエロさについてひたすら語ってた(笑)。や、あの色気は確かにクルわ。けど神父がなぁ・・・あのどヘタレぶりがいいのはわからんではないけど、わたしはもっとこう常時詰襟を着用したデカくてガッチリした強面の神父が、結城の魔性に屈して犯罪の片棒を担いでいることに、うじうじ苦悩するさまが見たかったんだよ! あんなチャラチャラした私服や長髪は認めない。金はなくても、押さえるべき所は押さえるのが聖職者だっつの。だもんで「絵的には、伊藤秀明あたりに演ってほしかったなぁ」とこぼしたら、ふたりもなんとなく「あぁ」と賛同してくれたっぽい。そっか、わたしこの作品に関しては、神父に萌えたかったんだな〜、やっぱり。ま、山下リオがあいかわらずかわいかったので良しとしよう。


2. で、帰ってからツタヤで借りたDVDを消化。まずはエマ・ワトソン主演のテレビ映画『バレエ・シューズ』。著名ながらも放浪癖のある老学者に引き取られた3人の少女が、生活苦から芸能学校へ籍を置き、なんとかお金を稼ごうと四苦八苦。3姉妹は自分たちの名を歴史書に残すべく、それぞれの夢を実現させようと奮闘するのだが・・・がおおまかなあらすじ。原作は、1936年に出版された児童書。「児童文学を勝手に読む会『バレエ・シューズ/ノエル・ストレトフィールド』」の記事によると、原作者のノエル・ストレトフィールドは舞台女優の経験をもとに、少女が幸せなお嫁さんでなく、自立して夢を実現させていく児童書を多々著しており、本国イギリスではかなりメジャーな存在だそう。けれど日本では絶版になったものが多く、図書館で探すしかない状態で、アメリカでもメグ・ライアン主演の『ユー・ガット・メール』のワンシーンでネタにされたように、徐々に絶版・入手困難化の一途を辿っているとのこと。しかし少女演劇っぽい『不思議の国のアリス』や『真夏の夜の夢』、フランスに続いて浸透してくるロシア・バレエなど、イギリスならではの乙女趣味がてんこ盛りで、そっちの趣味の人たちは必見。やはりBBCのテレビ映画は手堅いです。ちなみに冒頭には、ダニエル・ラドクリフの『マイ・ボーイ・ジャック』のプロモーション映像が。いずれもハリポタ客をあて込んでのDVD化なわけだけど、こちらは第1次世界大戦へ従軍する青年将校のお話らしい。これまた極端な振り切りようで、ちょっと笑えました。んで、レバノン映画の『キャラメル』。中東の中ではかなり欧化の進んだ国ではあるものの、まだまだ古い因習が根強く残っている。カトリック信者の多さにもびっくり。でも、あまり抑圧されている感じや、それにたいする鬱屈などは前面に出されず、ガールズトークは世界共通なんだなぁって印象のほうが大。それだけに、痴呆の始まった姉・リリーをひとりにすることができず、おそらく人生最後のロマンスを棒に振る老嬢・ローズにガツンときましたね。麗しい姉妹愛といえばそうなんですが・・・うーん、複雑。姉妹愛といえば、『いちばんきれいな水』も観ました。カヒミ・カリィ扮するマリコちゃんの「じゃあ、わたしが生贄になってあげる」あたりからやばいやばい。菅野莉央がかわいいわ芸達者だわでもう。監督が、椎名林檎のPVを多く手掛けた人ってのに納得。『レオン』ネタなど、ガーリィさの匙加減がじつにいい塩梅。映像美最優先な感触は、ダイ・シージエぽいかも。でも、合わない人にはまったく合わない映画だと思います。リアリティ的な意味で。で、自己犠牲といえば、『ダイアナの選択』も観ました。『ウィズ・ユー』から5年飛んで『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』ではすっかり大きくなっていたエヴァン・レイチェル・ウッド、それからさらに5年が経ったいまではもう、すっかりおとなですね。『サーティーン〜』も二ッキー・リードとのガッツリ深い友情がキモになっていてウハウハでしたが、『ダイアナの選択』ではさらに、友情というものが、どれほど深くその人の人生に関わってくるかが描かれているように思います。角田光代の『対岸の彼女』を、すさまじくシビアにした感じ。監督がウクライナ出身ということで、つい伝説的な映像の魔術師、セルゲイ・パラジャーノフの影響を捜してしまったり。ユマ・サーマンが母親役ってのに時間の流れを感じるものの、エマ役の女の子がすさまじくかわいくて脳天を揺さぶられます。まさに『ウィズ・ユー』のときのエヴァン・レイチェル・ウッドを目にした衝撃に近いものが。DVDはそんなもん。個人の幸福はどこまで追求されてよいものなのか、それにまつわる良心と罪悪感のせめぎあいなど、いろいろ考える契機になる作品が多かったな。それだけに、そのあたりの描写をうやむやにして、薄口なぶんアクションで押し切った『MW』は若干残念。あと、皆川博子の『倒立する塔の殺人』読了。すごくよかったんだけど、その感想は次の機会に。録画分をまったく消化してない・・・。