1. いま
群ようこの書いた
尾崎翠の評伝を読んでいるんですけど、凄まじいまでの愛情がほとばしっているのに驚きます。「幻想的なものは苦手で恋愛物も読まず、もともと小説好きではない」
群ようこが、「
第七官界彷徨」を読んで衝撃を受け、評伝を著すまでに至ったのです。個人的に「
第七官界彷徨」こそが、のちの
大島弓子や
高野文子作品の始祖にあたるのではないかと考えているので、おっさんにもじゅうぶん受けるエッセイストという
群ようこのイメージと、なんだかそぐわない気がしたのですね。
群ようこは、「
第七官界彷徨」の主人公である町子を「(さばさばして男っぽい性格だったという)翠のなかのかわいらしく、切なく、女らしい部分があふれていて、読んでいるといじらしくなってくる」と表現しています。そして評伝は、「
尾崎翠の名前を知る人はまだまだ少ない。私は「
第七官界彷徨」を読んで、日本の小説はこの一作でいいとすら思ったこともある。この本を読んで、
尾崎翠という作家に興味を持ち、そして彼女の本を読んで下さったならば、これ以上の喜びはありません」という文句で締められている。この評伝が出版されたのは1998年、同年には映画化もされました。が、やはり
尾崎翠を知る人はまだまだ少ないように思われます。これから先、より多くの人が畏敬の念とともに
尾崎翠の名を胸に刻むことを願わずにはいられません。
2.
「2007-11-26 あうぅとうぐぅ」や
「2007-12-30 ガールズ・ブルー」でちょろっと言及しているけれども、自分にとって母娘愛とか姉妹愛だとかの象徴といえるのが、
宮尾登美子の作品群。中でも、映画で観た『夜汽車』や『櫂』の衝撃は計り知れないものがあります。『
篤姫』から再び注目されている
大河ドラマ、その現行の舞台が土佐とかで、それにあやかった本や商品をちょろちょろ目にしますけれども、なんだかしっくりこない。たぶんわたしのなかでは、高知=
宮尾登美子という公式ができあがっているんじゃないかと思われます。で、初期短篇集『影絵』所収の「連」は、キャリアの最初期に書かれたもののひとつなのですが、これがまさに百合小説といって差し支えない内容でして、この小品を起点として書かれた作品の数々がわたしの琴線に響くのは当然であったのだと、妙に納得させられたものでした。
水上勉による解説文を一部引きますと、「真珠の虹珠にとりつかれた連師が、珠の化身のような短い生を終えるという筋書きを、もう一人の女に語らせて、連師とその語り役がかもしだす不思議な絆を妖しく表現」した内容となっています。同志にはぜひともチェックしていただきたい、大事な大事な作品です。