スーパーフラット・ガールズラブ

最近ますます物忘れが激しくなる一方で、固有名詞がなかなか出てこなくてイライラすることこの上なし。なので、芋づる式に思い出した話を。ついこないだ、どこで見かけたかは忘れたのだけど(たぶんツイッターだろう)、町山智浩さんがカイカイキキのMr.を批判していたことについて言及した文章があって。で、そんなこともあったなぁと頭の片隅に引っかかりつつまた忘れかけた頃、こんなニュースを見かけたんです。

中国嘉徳国際拍売有限公司北京市内で開催した春のオークション会で15日、中国の現代美術界における巨匠、石冲氏の作品「今日景観(今日の景観)」が2609万8000元(約3億5300万円)で落札された。(中略)中国では、芸術品のオークションが盛んだ。作品そのものに対する評価以外に、投機的な思惑が強く働き、極めて高額で落札される場合も珍しくない。
サーチナ - ヌード作品に3.5億円―北京でオークション、「今日の景観」

なんというかもう反射的にゴッホの「ひまわり」を思い出さずにはいられないニュースですが、それよりいつから中国は「芸術なら裸婦もあり」になったんだろう? と素朴な疑問が。それとももともと? みたいなことを考えているうちに、また町山さんの話を思い出したわけです。さて、わたしが村上隆氏を意識し始めたのは、おそらくその他大勢の方々と同じく、2003年にルイ・ヴィトン村上隆田中知之のコラボレーションによってつくられたアニメ「SUPERFLAT MONOGRAM」を観たのがきっかけでした。

UNDER17がメジャーデビューしたのも2003年、ネット上で「巫女みこナース・愛のテーマ」が話題になったのも2003年。「ひょっとしたら、本当にオタ向けのものが市場を席巻するようになるかもしれない」と思ったものでした。当時はまだ「ははは、こやつめ」というセルフ突っ込みつきでしたが。そして現在、それはほぼどのジャンルでも現実のものとなりつつあります。で、件のMr.批判は過渡期にある2007年に書かれた記事なんですね。

アニメやマンガが長年かかってやっと作り上げた国際的評価に後からのっかって、それを手軽にマネして「アート」として売る。この手の「アート」屋たちがやっていることは、アニメやマンガが達成したものを「搾取」しているわけだ。
ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記 - 昨日の絵は1500万円

翌2008年には、村上隆制作のフィギュア「マイ・ロンサム・カウボーイ」がサザビーズのオークションで16億円で落札されました。オタネタでそんだけ荒稼ぎされれば、低賃金で働くアニメーターや原型師のエピソードを直接間接問わず漏れ聞くオタは黙っていられないというもの。しかもそれが、誰もが知っているものを目的にしたがって引用するのではなく、剽窃によってでっち上げられた作品だと。この問題について、さらに考察をされているサイトさんがありますので少々引用。

おたく文化には文化的価値、とりわけアートとしてのヴァリューがある。海外ではその認識が普通になってきている。なのに肝心の日本人が全然分かってない。だから村上さんひとりに好き放題やられてるし、貴重な資料もどんどん流出してるんじゃないですか?
Nyao's Funtime!! - 村上隆批判をしている暇があったら「おたく文化」資産の維持管理に危機感を持つべき

これが書かれてから約2年半。ハルヒ動画共有サイトの絶大な影響によって、ライト層まで含めればオタ人口は飛躍的に増加しました。文化庁あたりも「アニメや漫画はクール・ジャパンの象徴」つってあれやこれやとイメージアップを図ろうとしていますが、なんかいろいろ空回りしている感が否めない・・・。そうこうしているうちに海外でのDVD販売数に陰りが見え始め、さらに加えて非実在青少年規制問題が浮上。文化庁はオタが寄り付きそうもないビル建てるより、才能や実力のある人材をそろそろ本気で現代美術界へ売り込んでいくべきじゃないですかね。


今週の801大賞

結婚しようと思った。でも、断られた。「本当に心の底からプロポーズしたんだろうか? 断られてから自問しました。結局、他人と家族を形成し、自分1人の責任を超えることから逃げてるんじゃないか? だから、本質を見抜かれ断られたんだ」独りきりで生きていく運命なんだと腹をくくった直後、今度は男から「村上さんに一生ついてゆきます」といわれてしまう。その男は「Mr.」という名のアーティスト。村上の一番弟子として、今でこそ人気が高く、作品は飛ぶように売れるが、当時はまだ海のものとも山のものとも知れなかった。「これって、もしかして結婚と同じ?」。悩みながらもMr.を雇い入れ、現代美術家としての活動を本格化させていく。村上は当時、後に出世作となる等身大のフィギュア作品を手がけていた。制作費用は出ていく一方。学園祭の講演やメディアへの出演をこなし、食いつないだ。「当時は本当に食えなかった。年が越せそうにないときがあって、学園祭でもらってきたタダ酒をパーティーで売って年を越そうとしたり…」テーブルはMr.と拾ってきた段ボールで作った。「金はなくてもやればできるよ!」とはしゃいでいたら、たまたまやってきた大学の同級生が、今にも崩れそうなテーブルを見て一言。「村上、お前ここまで堕ちたのか」。同級生はあきれながらも5000円を恵んでくれた。家族のように苦楽を共にし、“兄弟仁義”を交わしたMr.との暮らし。どん底の貧乏すら笑い飛ばしてきた。
【わたしの失敗】現代美術家・村上隆さん(45)

なんて萌え萌えなエピソードなんだ!っていう。まぁMr.もいろいろ言われて大変でしょうが、彼の作品にこんなのがありまして。

ほんとチョロいなぁと我ながら思うのですが、こういう絵を見ちゃうとどうしても嫌いになれないんですよね・・・。